京都の星和電機株式会社が提供する、メンタルヘルスセルフケアサービス「マイセルフ」
マイセルフは、心のセルフケアに着目したサービスで、認知行動療法を元にした研修により自分自身でメンタル不調を未然に予防するため対処方法を身に着けていただき、自身のレジリエンスを向上させ、メンタルヘルスの課題をなくすためのサービスです。
また、職場ではチームの中の価値観の違いや普段は話さないけれど感じていた事を共有する機会を提供することで、心理的安全性の高い組織づくりを実現や、従業員エンゲージメントの向上にご活用いただいております。
自己紹介

木村 美都里
/合同会社LEARNER代表、LEARNER FACILITATOR、Gallup社認定ストレングスコーチ
千葉大学教育学部で教育心理学を学び、小学校教員免許、幼稚園教諭免許を取得。
2020年、4人の子育てをする中で教育に熱い想いを抱き、合同会社LEARNERを設立。
世界の教育情報共有WEBサイト<OVER THE BORDER -読む聴く知る 世界の教育->を制作&運営。
LEARNER FACILITATORとして、子どもたちの学びの多様化を促す活動を行う。
2021年、大阪産業局主催ビジネスプラン発表会LED関西第8回ファイナリスト選出。
2022年、Gallup社認定ストレングスコーチの資格取得。
2023年、国内唯一のステップマザーに特化したコミュニティサイト<STEP MOTHER &YOU>を制作&運営。

黒田 莉沙
/星和電機株式会社 事業戦略本部 事業企画課
立命館大学理工学部卒。2015年星和電機株式会社に入社し、防爆製品の設計開発業務に携わる。2020年、新規事業推進室のメンバーとして任命され、シーズを活用したIoTやスマートシティ向け機器、自身の抱いていた子育て課題解決のための保育所向けのソリューション企画に関わったのち、企業の組織課題やメンタルウェルネス課題を解決するため、現在の事業開発に着手。様々な企業や会場で、組織の心理的安全性を高めるワークショップや、親子で身に着けるレジリエンスワークショップなどを開催し、メンタルヘルスケアについての認知を広げる活動を実施している。1児の母。
概要
社員のマインドセルフケアサービス「マイセルフ」を立ち上げた黒田氏が、ファシリテーターと共に、様々な業界業種の方々と“メンタルヘルスケア”を軸に対話を重ねる企画。
第一回は、日本の教育に課題を感じ、子どもたちの学びの多様化を目指して活動している木村氏との対談です。
目次
1.国内の学校教育におけるメンタルヘルスリテラシー
2.海外の教育現場におけるメンタルヘルスリテラシー
3.メンタルヘルスにおける大切なポイント
4.負荷が増している親のストレス
成長の余地アリ!教育におけるメンタルヘルス
1.国内の学校教育におけるメンタルヘルスリテラシー
ファシリテーター(以下、略)−− 本日はよろしくお願いいたします。まずは、木村さんが教育の領域で活動されているとのことでお聞きしたいのですが、現在の学校教育ではメンタルのことに関して課題はありますか?
木村:
現状の日本の学校教育、特に初等教育では、メンタルに関しては学校現場で触れられていることがほぼないと思っていただいてよいかと思います。この、”触れられていないという現状”が課題になりますね。
−−たしかに。
木村:
悲しい話ですが、近年子どもの自殺者数が過去最高の年間500人越えという現状がある中で、国としてもメンタルヘルスの観点で動き出さなきゃいけないと思っている部分はあります。2020~22年に行われた学習指導要領(※注1) の改訂に合わせて、精神的な部分に触れるようなメンタルヘルスの項目を組み込んだことにはなっているのですが、じゃあ、実際に学校現場で、子どもたちに対してメンタルヘルスリテラシーという教育がきちんとほどこされているかというと疑問に感じます。私自身が、実際に子育てしている中で、保護者の立場として学校教育を見ていても、充実したカリキュラムが組まれている気はさらさらしていない現状がやっぱりあって。
黒田:
私も、子育て中なので、その辺りのこと単純に心配だなと思っています。自殺が起こりにくい地域や学校などあるのかな、とか、そういう学校はどういうことに取り組んでいるのかな、とか。でもやっぱり実際の中身は見えなくて、表面上のことしかわからないので。
木村:
子育て中だと、そのあたり気になりますよね。でも、日本の教育現場では、まだまだ予防という観点は薄くて、いじめや事件が起こって子どものメンタル面の問題が表面化する事が起きてから、じゃあどう対処するのかという後手の対応の動きがほとんどだと思います。
−−そうですよね。ニュースとかに出るのは、いつも後処理の話をしている感じがします。
木村:
そうなんです。問題が起こる前にどう手を打っているかっていうのは、やっぱり日本の国内の教育現場によってはまだまだだと思っています。けれど、目線を変えて海外の教育現場を見てみると、子どもたちのメンタルヘルスリテラシーに関することが、カリキュラムに組み込まれてあるのが当たり前なところもあるんです。
2.海外の教育現場におけるメンタルヘルスリテラシー
−−そうなんですか。例えば、どのような事例が?
木村:
例えば、オーストラリアの事例をお伝えすると、私の運営している世界の教育情報共有サイト(OVER THE BORDER- 読む聴く知る 世界の教育-)のオーストラリアの情報を伝えてくれるライターさんの記事の中に出てきたのですが、オーストラリアの小学校には、国語算数理科社会みたいな科目の中に、「health(ヘルス)」という授業があるそうです。お子さんにhealthの授業内容を尋ねてみると、体の健康のことを学ぶだけではなく、Bounce back(落ち込む状況にあっても、他に楽しいことや好きなことを考えて、気持ちを前向きに切り替える方法)を学ぶそうです。
黒田:
まさにメンタルヘルスリテラシーですね!
木村:
そうなんですよ。そして、さらに調べていくと、オーストラリアの小学校では、Bounce Back Programというものがカリキュラムに組まれていることがわかったそうです。日常で困難な状況にあっても、ポジティブな面を探して自分を保っていく力、勇気を持って立ち向かう力とか、ユーモアを持って良い人間関係を築くとか、失敗を乗り越えて自ら設定したゴールに辿り着く力を養うっていうことを目的としている。そういう力を、子どもたちが理解できるように、ゲームを取り入れて体感できるようにしているみたいです。ティーチングで教え込むだけじゃなくて、授業の中で体験できるように、カリキュラムがきちんと設定されている。
3.メンタルヘルスにおける大切なポイント
−−なるほど。日本との違いを感じますね。日本はメンタルケアにおける対応が後手に回っているという話がありましたが、そのあたり、黒田さんが考えるメンタルヘルスにおいて大切にしなきゃいけないこととは、何があるのでしょうか?
黒田:
メンタルヘルスにおいて、方法はいろいろあり、どれかひとつが正しいということではないのですが、自分の考え方や、どうして今自分はそういうことを感じているのかなどを内省し、自分について自分で理解を深める、ということが大切だと思います。
−−なるほど。
黒田:
「こうしないと悪い影響が起こるかもしれないですよ」とか「ストレスのある条件はこれです」とか「こういう職場はダメです」とか、そういう時代ではなくなってきていると思います。ストレスは人それぞれに感じるもので、万人に対して「絶対にこれがストレスだ!」というものがあるわけではないので。実際にストレスを感じた時に、自分や身近な人がそれをどう捉えるのかや、何がストレスなのかということを考えて、それをどう受け流していくかということを各自が考える、ことをしないといけないわけです。
4.負荷が増している親のストレス
−−ストレス、というワードが出てきましたが、今、自分たちが幼い頃とは大きく外部環境が変わってきていて、核家族化が進み親の負担が大きくなり、親としてのストレスが強くかかっている時代じゃないかなと思いますが、いかがですか?
黒田:
親のストレスについて、最近強く思ってることがあるのですが、親ってもう休まる時がないですよね。仕事して帰ってもまた家で仕事している状態で、それがもう永遠に休まる時がないと感じるくらい切羽詰まると、子どもに対して優しく出来なかったり、どうでもいいことでも厳しい言い方をしてしまったりして。それもまた自分のせいだとして落ち込んで、親としてどうなのかなと自分を責めて。先生たちも同じように忙しくて余裕がないので、子どもたちにそのしわ寄せがいっているんじゃないか、と思うんです。子どもに甘えさせてあげる余裕が、大人にない。
木村:
おっしゃる通り、特に子どもに触れ合ったり関わったりする立場にある大人はなおのこと、精神的にも物理的にも余白を持たないといけないのだろうなと感じています。核家族化によって子育てにかけられる人手が足りなくなっている現状ですが、 余白を持たないと、子どもにしわ寄せが出てくるのだと思います。あと、教育の面から捉えると、世間の過渡期は過ぎたかなと思ってはいるのですが、小学校受験、中学校受験、高校受験で、子どもたちが外との数値と戦わなければならないという節目よって、親が自分の子をほかの子と比較しなければならないというストレスがあると思います。
−−それはまさしくですね!
木村:
これは、時代をさかのぼって考えると、みんなが田畑を耕していた時代にはなかった親のストレスです。 時代が進んで、どこどこの小学校に入って、どこどこの中学校や高校大学に入ると、社会的に成功者になれる、それが正しい人生だ、というような感覚が社会に生まれ、偏差値という比較の物差しが生まれ、その中で親は否応にも我が子を他人の子と比較しながら、数字を見て子どもを判断しなきゃいけないっていうこの事実は、親にとってものすごいストレスだと思うんですよね。だんだんその偏差値重視というような学歴重視が、 落ち着いてきてはいる時代の流れだと思います。けれど、日本以外に目を向けてみると、中国や韓国も日本以上に学歴社会であり受験戦争が過激であるのはよく知られているのですが、変化が起きています。
−−どのような変化が?
木村:
中国では国として大きな政策を発表して、簡単にいうと、国が塾と宿題を禁止としました。受験戦争に拍車をかけている進学塾を禁止にしたんです。国が直接介入し始めてるぐらい、やっぱり教育も時代の流れとともに変化しつつある。 中国がそういう決断をして動き始めている中、日本はまだ受験だなんだっていうのは言われているので、日本も国の教育の策として変えていかなきゃいけない時に来ていると切実に思います。
~後半へ続く~